名物おじさん

旅をしていると、頼みもしないのに何故かいろいろ教えてくれるおじさんが、どこからか現れることがある。
夕べ、熊野古道・伏拝王子のたもとでパンダに乗ったまま力尽き、眠りに就こうとしていると、誰かがガラス窓を叩いた。おじさんだった。
「こんなところで寝てるんだったらウチへいらっしゃい。」
山のてっぺんに位置するおじさんの家はNHKの連続ドラマ「ほんまもん」のロケ地に使われたという。たしかにすばらしいロケーションだ。おじさんの奥さんは、熊野古道の語り部をしているそうで、土地の縁の話を流暢に語って下さった。おじさんも奥さんも、その語り口にはこの土地に生きるものとしての深い誇りと愛情があふれていた。
熊野古道は世界遺産に登録されて以来観光客が急増しているらしい。おじさんも奥さんも大忙しだ。どうかこれからも御達者で。松茸ご飯ごちそうさまでした。