いちいがしの会講演会にて

awatomo2008-11-25

故後藤伸氏の講演議事録『明日なき森』出版記念として開催された、〜熊野の森ネットワーク〜いちいがしの会講演会に出席してきた。
いちいがしの会は”熊野の豊かな自然を取り戻そう”と、様々な活動をされている。
街から来た我々から見れば、緑がいっぱいあって、花が咲き誇り、蝶やトンボがいっぱい飛んでいたら、”ああ自然がいっぱい空気がうまい”と思うものだ。しかし、ここでいう”豊かな自然”は、もっとずっと上の次元を指している。
ここはかつて、手つかずの原生林が生い茂り、ここにしかいないような珍しいたくさんの動植物がいて、世界的にも特別な場所だったのだ。すでに過去形になりつつあるらしいが・・・。そして当然ながらそれらが失われた原因は全ては人間にある。
ところで、この講演会の中で興味深かったことに、藤原京遺跡の発掘調査に出土した昆虫遺体の中には、現在絶滅してしまったさまざまな昆虫がゴロゴロと出て来たという話があった。当時はごく普通のありふれた虫だったものが、今では絶滅しているのだ。1300年ほど前の話である。
これを聴いて、ふと今自分達がしている事の大切さを感じた。
今、僕の家の田畑にはたくさんの虫達がいる。まぁ、おそらくどれも専門家の興味をそそるような特別な種ではないだろう。しかし、このごく普通のありふれた虫達が、普通でなくなった時、いったい世界はどうなっているのだろう。そう考えると恐ろしくなった。実際、ここではありふれた虫達でさえ、都会では見られない。そして、これらの虫達は僕らが移り住んで農薬を使わずにやり始めてから、たった2年で明らかに数も種類も増えている。
当たり前のものが当たり前では無くなった時は、すでに手遅れな場合が多い。絶滅に瀕した種の保全活動や、失われた原生林を蘇らせるような努力は、もちろん大切だし必要だと思う。でも、こうしたごく普通の自然を普段の生活の中で守っていくこともまた、重要な意味があるのではないかということに気が付いたのだ。
このごくありきたりの虫達の暮らせる環境を大切にしていきたいし、また彼らと共に生きていけることを感謝して、これからも取り組んでいきたい、と身の引き締まる思いで帰路についた。